十年後、その後あたりの話
ボスの子どもを育てる副官と、そのかわいそうな子どもの話
ボスがおとなげなさすぎてびっくりする話
けっこうえぐいプレイやってます
よろしければこのままお進みください
ザンザスの子どもを育てたのはおれだ。
ぎゃあぎゃあ泣くだけの生きものを抱いてあやし、
熱心にミルクをやったのもおれだし、
丁重に湯につかわせたのもおれで、
なんなら下の世話だって率先してやってやった。
ルッスーリアは心配して、またベルフェゴールは面白がってその援助をと試みたが、
なんともその赤子はみごと、おれにのみ懐いた。
黒い髪と真っ赤な瞳でしがみつかれたのなら、ふりほどけるわけがない。
その血統をもって求められたのだから、愛しくないわけがなかった。
血統
この生きものがどこからどのようにやってきたのか、その真実のありかは、ザンザスとおれ、それから沢田綱吉しか知り得ない。
ザンザスにこそ家族をと求め、深窓のご令嬢を思いついたように彼に宛てがった、九代目の老害たるはそのあたりに所以がある。
(沢田ですら、老人に権力を持たせるとろくなことがない、と嘆いたほどだ)
ボンゴレ傘下の小さなファミリー、そのボスの娘、病弱ではあったが教養があり、何よりその令嬢はとても美しかった。
ザンザスは彼女と三度ほど食事をする場を設けられた。
四月に一度、六月に二度、
それだけだった。それきりだった。
(箱入り娘はプディングのように頼りない、ぐにゃぐにゃして抱くに堪えないと、ザンザスは彼女と会った夜は必ずおれを手元に置いて抱きつぶした)
しかし順調に順調に、かつ内密に内密に、婚儀の準備は整えられ、しかしそこにザンザスの意思は一ミリだって挟まっちゃいなかった。
八月の終わり、婚儀まであと一カ月というところで、令嬢は妊娠を自覚する。
子どもを身ごもっていては、子どもと自分の体調、何より体型が心配なので、婚儀は延期したいという。
ザンザスは常にないような笑顔で、それを了承する。
そこからは驚くほどに、ザンザスの描いた脚本のとおりに進む。
彼女は人知れず子どもを産み、出産に耐えきれずに死ぬ。
華やかに執り行われるはずの婚儀は、しめやかな葬儀と成り代わり、
残った男児はザンザスが引き取る運びとなる。
これは悲劇だ。
その幕が上がって下りて、悲劇の王たる息子の姿に、九代目もようやく溜飲が下がったようだった。
ノンフィクションでない部分はもちろんある、
なぜっておれの刃は彼女の血を吸っている。
ザンザスはいわずもがな、おれを呪って死んでいった彼女もとても美しかったから、
ともあれ、おれの手元にはそれはそれは愛くるしい赤ん坊が残った。贔屓目抜きにしたって可愛い赤子だった。
ザンザスは満足したように、それの養育をあっさりおれに押しつけた。
息子へは、おれという愛人への(持ち合わせの少ない彼にしては)過分な愛情、その取りこぼしを気まぐれに与えるのみで、父親としては落第点だった。
それでもその子どもは、純粋に人間として男としての優性を嗅ぎ分け、力に憧れ、ザンザスを父として尊敬し畏怖する。
なんの問題もなかった。順調だった。
日々おそろしいほどにザンザスに似てきて、ときどき跪いてしまいたいような衝動にすら駆られる。
現在四歳を数えたばかりだが、それでいて立派に王だった。育てたのはおれなのに。どうしたってザンザスの血は粘度が高いようで、滾々と小さな体の中を流
れ、王たる資質を練り上げていた。
なんの問題もない、順調だ、
悲劇の幕は下り、日常劇の脚本だってザンザスはお手の物、
幕が開いて四年は本当に彼の筋書きの通りに進んだように思う。
ところが、だ。
幼い王が五度目の秋を経験したその折に、思わぬ番狂わせがある。
子どもは明日の天気を諳んじるような気軽さで、口に上す。
「スクアーロ、どうしておれの母親にならないのか?」
思わず飲んでいたカプチーノを吹き出した。
マンマ、と呼ばれたのはまだ記憶に新しい。
誰が教えてしまったのか、おれを見てはマンマ、マンマと繰り返す涎まみれの口もとを拭い、頬にキスを授けながら、おれはおまえのマンマじゃねえんだぁと何
度も知らしめた。
おまえのマンマはおれが喰らっちまった。
おまえのパパンの幸せのためとかほざいて、ほんとはおれが、おれこそが、おまえのママンが大っきらいだったんだぁ。
殺してよかったぜぇ、パパンとおまえがいっぺんにおれのもんになったからなぁ。
柄にもなく訥々と話せば、なんと赤子は腕の中で眠りだした。(ザンザスの子だけあって、さすが図太い)(おれも大概で、それ以来、子守歌代わりにその話を
聞かせるようになった)
そしておれをマンマと呼ぶことはすっかり諦めていたはずだった。
あ、とかう、とか、二の句が継げずにいるおれをしり目に、
おれの乳飲み子はさらなる爆弾を投下する。
「おまえが未だ、お父さんのものならないということは、
おれこそが手出ししても良いということか」
子どもが真摯にそう言うので、思わず卒倒しそうになりながら、ザンザスの寝室へ飛び込む羽目になる。
「…それで?あれをそのまま放置してきたのか」
「…あんまり驚いて、放り投げてきちまったぁ、悪いかよ!」
ずかずか仕事部屋を横切り、寝室を目指し、ザンザスのベッドにダイブする、最高級の羽毛が混乱した体を労わった。
以前なら問答無用で殴り飛ばされていた行為だが、やれやれといったふうに、部屋の主は大量の書類への署名活動に終止符を打ち、こちらへ視線を向けてくれ
る。
これは本当に、丸くなったと思う。
ことの経緯を説明すれば、長い脚が大股でこちらへやってきて、おれに覆いかぶさるようにして髪を梳く。
「いや?悪かねえ。おまえに手出しがどうのと、ぬけぬけと言うような青臭いクソガキに、
上司の女に悪さを働いたらどうなるのか一度わからせてやらんとな」
そのまま唇を塞がれ、
「ん、上司て、おまえ、父親、ん、ん」
隊服を割り開かれ、
「それに、あ、まだあいつ、四つ…っ」
ブーツは気恥ずかしいほど丁寧に脱がされて、
「年齢は思慕と殺意の理由にはならんと知っておけ。
おれがたとえあれくらいのガキだったとしても、おまえみてえなカスごとき、
誰を殺しても手に入れる」
露わになった足首にまで舌が這う。
「ザンザス…ッ、あ、う、そこ、やっ…」
「だがあれはおれじゃねえ。おれはあれには殺されねえ。
格上に喧嘩を挑むなら、それ相応の覚悟をしとかなきゃいけねえことを、あれは知るべきだ。」
内腿にまで舌が到達し、カプチーノの垂れた胸元には長い指先が悪さを仕掛ける。
「あ、あ、知る、って、おまえ、っ何を、」
仕掛けた指先が、今度は何やら、ベッドを覆う天蓋に細工を。
舞台の幕が開くように、ドレープがゆったり持ち上がる。
さて、そこに見えたものは。
「ガキ、ほら見ろ、
これはどうしたっててめえのもんにはなりそうもねえだろう?」
歯を食いしばった、四歳児。
おれを組み敷く男の、息子。おれが育てた、可愛い幼子。
どうしてここにいる。
頭が真っ白で、事態を理解するのに数秒を要した。
理解してからは思わず悲鳴をあげそうになった。
さすがに悪趣味がすぎる。いっそ殺してほしいほどだ。どうしようもない羞恥と混乱、涼しい顔でおれをいいようにし続けるザンザスの神経を疑う。
「手出しっつうのはな、こういうことを言うんだ、クソガキ」
さらに事を進めようとするので、さすがに抵抗を試みる、
そうしたら左頬を張られて乾いた音が響く、
強引に足を割られてそこを慣らされる。
瞬時、幼い方の赤い瞳が怒りに染まり、猛然と駆け寄ってきて、キングサイズのベッドに乗りあげようと苦心する。
「スクアーロに何をするんです、お父さん!」
「おれはおまえの知るように、口下手だ。だから“見せて”やる。
おまえが可愛くねえわけじゃねえ、ただ身の程をわきまえろと教えてやってるわけだ。
特等席だ、かぶりつきで見てろ」
言うが早いか、ザンザスは息子にわざと見せつけるようにして、おれに押し入った。
今度こそ、おれと子どもと、ベッドが、悲鳴を上げる。
「いやだ、これ、あんまりだ!や、やっ、ああ、ばかぁっ」
「スクアーロ」
「こんなとき、呼ぶな、ずるいっ、…見るな、あっちいってろ、あ、んっ」
「スクアーロ、もっと開け」
「最低、う、んんっ、や、きもちい、なんで、なんで…!」
「スク、良い子だ、見せてやれ、」
「いや、やぁ、見せないで、ひどすぎ、る、開かないで、あっ、」
おれは泣いていた。
子どもに見せたくないだの一端の口をききながら、がくがく揺すぶられ十二分に快楽にねじ伏せられて、泣いた。
子どもだって真っ赤な顔で泣いていた。
手近にあったクッションやらペンやら本やらをザンザスへ投げつけ(いつやらの父親を彷彿とさせる)、「おれはお父さんみたいに、ひどいことしないのに!」
との台詞を捨てて場外退場、
ザンザスだけが上機嫌で、
ありゃあ今夜寝れねえなあとくつくつ笑った。