おれの作った不細工なおにぎりを大事に抱えて

幼馴染は笑う



おれが守りたいのは、

国だとか名誉だとか名声だとか

そんなくだらないもんじゃねえ、

あのな、かず、おまえだよ



って、なんだそれ


かっこつけすぎだし

遺言ぽいからやめろ、って

叫びたかったけど


くそ、涙が喉を押しつぶして

何一つ

おまえに言ってやれないおれを許せ






















ナイト





















おれと仁は幼馴染といわれる間柄ではあるが、

おれはこの国の王の息子として、彼は国を守る誉れ高き騎士団長の息子として

生を受けた。

それでも幼いころはよかった。

王の側近であり、師団長であった仁の父親は、父王より格別の厚意を預かる身であり、

当然、息子の仁も目をかけられ、おれとともに剣術を学び、歴史を学び、自然を学び、帝王学を学んだ。

年の近いおれたちは兄弟同然の絆を得て、いつも二人いっしょだった。


しかしいつしか、たしかあれは、12になって間もなく、正式に父の後継を認められた日だった。

仁はおれに対して敬語を使うようになる。

かずやさま、と初めて言われた日には、熱でも出たかと心配したが、彼は至って大真面目だったのだ。

腰を折るようになり、わざとらしいまでにへりくだり、

極めつけは15になった誕生日のその日だ。


国中がおれを祝い、酒を飲み、花火を打ち上げ、王宮に贈り物を届けた。

15というのは、この国では大人と認められる節目の歳であり、

父はこれで、いつでもおれに王位を譲ることができるので肩が軽くなる、とふざけた。

側近は笑い、召使いたちは感動に泣き、仁の父親は本当に大きゅうなられた、とおれの頭をなでてくれた。


仁だけが。

にこりともせず、そこにいた。


皆が去ってのち、彼はおれを呼び止めた。

おれより二つ年上の彼の声は、もうおれよりずっと低く甘い。

妙齢の女性との噂が絶えないのも納得だ。



「王子」

「祝いの言葉でも思いついたか?遅いっての」


おれは努めて明るく振舞うのに、幼馴染は目を伏せたままで。


「あなたの15の祝いに、一家臣であるおれからおこがましくも差し上げられるものが、

 たったひとつしか見当たらない」

「じ、…」


仁はひざまずく。

ふわりと、彼の纏う黒のマントが夜闇に浮かんで、沈む。

突然のことに、おれより背の高い彼のつむじを呆然と見つめる。

緊張しているのか、冷たくなった指先が、

壊れものに触れるようにおれの手を掴む。

重たく持ち上げられた視線は、思いがけず強く、おれを射抜く。



「おれはいつか親父の後を継ぐ。

 そしたら、おれは、あなただけの剣になる。

 おれの全てで、命をもってして、

 あなたが守りたいものを守り、滅したいものを滅し、 

 あなたの治世が喜びあふれたものとなるよう、

 この国に仇なすもの全ておれが斬る。


 その誓いと忠誠を、今夜、あなたに」



恭しく、

くちびるが降る。

おれの時はしばらくとまり、口づけられた自分の手を馬鹿みたいに注視し、自分の心臓の音を知る。

しばらくして、ようやく首から上が動いた。

ぐるりと横の窓、その外を見れば、漆黒の空には星がきらきら輝いて、

そのいくつかは向こうの山の頂に降った。

眼下には未だ眠らぬ街が、人々が、祝い酒に酔って明るく華やいでいた。

少し頭が冴える。

自分の手が震えているのに、気づく。きっとおまえも気づいていたろう。

おれはそれが恥ずかしくて、ゆっくりと振り払った。

そのまま仁のつむじめがけ、

思い切り拳骨を落とす。



「っんなもん、いらん!

 おれがおまえなんか活躍しなくて済むようにするから、

 上手くやってみせるから、

 …そういう悲しいこと言うな」


激昂して訴えたのに、

仁は落ち着き払って、微笑んだ。

一人で大人になってしまったのだ、彼は。

















趣味に走った結果がこれだ・・・