一つだけお願いします。
Pさまファンのかたはここでページを閉じていただきたい。
扱いがとてもひどくなります。
これを無視して読み進められ、御気分を害されても、
こればかりはご苦情受け付けませんので自己判断の上よろしくおねがいします。
ナイト
ほどなくして、父は病に倒れた。
国が揺らぐ。
仁の父親や側近たちが、おれを補佐し、おれは王として起った。
仁は静かに、おれを見つめていた。
あの日。
仁が嬉しくもないことを誓ってくれたあの日、おれも誓ったから。
この国を侵さず侵されず、平和に治めると、仁に誓ったから。
他国にも下に見られぬよう、ときには傲慢にしたたかに、
それでいて綿密に、
おれは今まで学んだ全てで国を守ったつもりだった。
精一杯にやれば、きっと結果がついてくると信じて疑わなかった。
所詮、子どもの思い上がりだ。
うまくいったこともある。
より発展したものもある。
若い身空でありながら父王にも勝る賢王である、と褒めそやされ、有頂天になっていたのかもしれない。
ただ、たったひとつ、たったひとつだけ。
知略及ばぬ誤算があった。
隣国より、とある申し入れがあった。
隣国は強大で、戦力では我が国は太刀打ちできようはずもない。
それでも友好関係が長い間続いていたのは、豊かな土壌を抱く我が国が経済力で勝っていたからだ。
隣国はそのおこぼれにあずかり、我が国も戦力の貸与を受け、お互い成り立っていた。
ところが。
隣国も王が代わり、おかしな要求が多くなる。
平和を望むおれは、瑣末なかけひきも駆使しながらも、王とは王子のころよりの付き合いがあったこともあり、
できるだけ要求を呑んできたつもりだ。
だがその日は、
「戦をしよう、和也よ。
おれの国が勝ったら、おまえが手に入る」
頬杖をついてにっこりと笑いながら、山下は恐ろしいことを口にした。
彼の臣下たちも随分に慌てた。
王よ、突然なにを、だとか、お気は確かか、と口ぐちにまくしたてるところを見ると、
先刻のことはどうやら王一人の独断的意見であるらしいことがわかり、ほっとする。
「智、おれはそういう冗談は好きじゃない」
お互い王である身ながら、このような砕けた口調で話せるのも、彼だからこそ。
幼いころより交流があり、おれに優しかった山下だからこそ、信頼も厚かった。
だのに。
彼は、おれの目の前で、口応えのあった臣下を見事一刀のもとに斬り捨てた。
血を吹き昏倒する彼らを目前にして、ああ、仁と競わせたらどちらが腕利きか、などとあさってなことを考える。
そばにいた仁は冷静に、おれを自分の後ろへやり護ってくれる。
マントで覆ってくれたおかげで、おれは血の一滴も浴びることなくいた。
一方山下は、乱心なされたか、という他の臣下たちを眼で抑え、またにこにことおれへ向き直る。
「和也。おまえがほしいんだよ、わかるだろう」
「…王よ。
ご自分が何をなさっておいでかご承知か」
仁の口調には、感情の起伏は見られず、だが十分に相手を威圧した。
山下はゆっくりと顔を歪めて、仁を見遣る。
どちらも髪から頬から返り血が滴り、なまじ双方とも綺麗な顔だちの分、
まるで死神の抗争のようだ。
「仁。おまえとも幼いころよりの付き合いであるな。
…身分を心得よ」
「失礼を。ですが私は現在、国家騎士団、王直属部隊長に任を置いております。
ですから、たとえ貴方様が王の位を戴く方であれ、わが王の御身に害なすおつもりであれば、
私には貴方様を弑し奉る覚悟のあることご承知いただきたい」
収集のつかぬ事態に、おれは両者をたしなめる。
できる限りの冷静さをかき集め、柔らかい声で。
「落ち着け。智もだ。
話にならん。後日、改めて。」
仁は腰の剣から手を放し、静かに定位置であるおれの左後ろへと引き下がる。
山下は不敵に笑う。彼の臣下たちは青ざめたまま、山下の一挙一動を注視する。
おれはゆっくりと、仁や他の側近を促し、部屋を後にした。
震えぬよう、予測の至らぬ今回の事態に動揺を見せぬよう、
おれは山下のすぐ脇を威風堂々歩くことに努める。
「…また近いうちに、和也」
すれ違いざま、山下のやさしい声がおれの耳に不快を張り付けた。
優しかった旧友はいったい、どうしてしまったというのだろう。
その後、数回めの会談でも折り合いはつかず、
後日隣国より、前代未聞の申し入れを受ける。
仁を。
仁を差し出せと。
自国の腕利き剣士と、この国で最も腕利きの者とを交換しようとの、理解しがたいものだった。
そうすれば、戦はせずにおく、と。
和平の証として、質を差し出せと。
まこと一方的な要求ではある。
しかし、それを退けるほどの軍事力を悲しいかな我が国は持ちえない。
「おれが行けば丸く収まる。」
仁はあっさりと言い放つが。
動揺を見せたのは、以外にも仁の父親だ。
いつもどっしりと構えるこの男が、顔を青くする。
それもそのはず、
「わかっているのか。お前、死ににいくのだぞ」
山下には、和平も交渉も関係ない。
ただ、仁を殺したいのだ。わかるのだ。
優しかった彼は、心を病んだ。そう思うしかない。
ここ最近の彼の言動は、明らかに常軌を逸していた。
会うたびに、おれへの賛辞ののち、仁を射殺しそうに睨む。
戦がしたい、おれを欲しい、赤西をくびり殺したいと、蛇のように舌をなめずる。
おれは山下が怖いんだ。怖い、仁。
「覚悟の上です、父上。
わが王の御為にこそ、おれは死にたい」
怖いけど、でも。
燃えるように、そんな、狂戦士のように笑うおまえを初めて見た。
それが今まで出会った何者よりも、おそろしい。
だから、おれは。
「…思い上がるな、護衛ふぜいが」
できうる限りの威厳と威圧とをこめて、仁を見る。
「国で一番がおまえだと、どうして分かる。
…トーナメントを開く。国中から剣士を集めよ。
その優勝者を、隣国の地へ送るものとする」
「王、」
「異論は認めん!」
「…御意」
勝手な覚悟をしておれを置いて行くんじゃない、仁。
Pさまファンのかたに殺される気がしますよ