注!忍者設定第二段。pも絡んできます、苦手な方はバックお願いします。ak←p、aは上級生、kとpは同級生です。
襖(ふすま)越し、おそらく気持ちよさのふかいふかいところにあってそれでも、
赤西仁そのひとは、おれの存在にたやすく気がつく。
ああばかなことをしたばかなことをしたばかなことをしたと、何度自責を繰り返したところで状況に変化はない。
月明かりは、ぴんと緊張する障子紙をまっしろく発光させ、
障子の枠の影がくろく四角く、見知った顔を切り取って揺らめく。
揺らめいた下の見慣れた顔、見慣れない表情、
かずや、とほとんど平仮名で呼びかけられて、せんぱい、せんぱいとそれしか言えない口がある。
やわらかな髪が、褥(しとね)をずり上がり、畳にこすられてしゃらしゃらと雅楽めいた音を奏でる。
耳を塞ごうにも、おれの両手はまるで意思を裏切って動かない。
ああ、なぜこんなことに。
亀梨が気に食わなかった。
同い年で、性格に難ありなところも相まって、おれとまったくもって重なり合う部分のない人間だと結論付けた。
気に食わなかった。
そこに確たる理由など、探そうとも思わなかった。
ただただ、見ていていらつくのだ。生意気を隠さない口も、高飛車を体現したような亜麻色の髪も、火薬を扱う筋ばった指先、ときおりの年齢相応に幼い笑顔、なにもかも、いらついてしかたなかった。
同じ学年の悪友共が、おい、と誘いかけるのに、だからあっさりと乗ったのだ。
どうやら今夜、赤西先輩が、亀梨を部屋に呼びつけるらしいぜ。
いくら赤西先輩でも、亀梨の態度がああもひでーんじゃ、さすがにそろそろ注意するつもりなんじゃね?
えーそれ見たい!亀梨、赤西先輩にはさすがに逆らえないし、怒られて萎れてんのとかめちゃめちゃ見たい!
それネタにからかってやろーぜ!
いいなそれ、おもしろそう・・・
・・・たぶん、全員が全員、そこまで悪人ではない。
ただ調子に乗って盛り上がって、あっさりと好奇心に負けたというそれだけだ。
しかし、最上級生の自室に忍び込むというのはやはり全員が尻込みし、その恐怖すら打ち負かす好奇心に尻を上げたのがおれだけだったという、本当にただそれだけだった。
なあ山下、ぜってー報告しろよ!という無責任な声にあいまいに頷いて、おれは偉大なる赤西仁その人の寝室内、押入れの中にわが身を押し込んだのだった。
さあ、そこまではよかった。
気配を消すことも、隠密としての行動も、年齢不相応なほどに自分が才に恵まれていることを知っている、おれは完璧だったはずだ。
しかし。
そして始まりましたるは、叱責でも仕置きでもない、ただの、
ただの蜜時であった。
亀梨は、おれたちに接するより幾分もやわらかく、赤西先輩に笑いかけて入室した。
後ろから入った赤西先輩は思いがけず、歳相応の落ち着きでもって、障子を静かに閉めた。
布団がもう敷いてあったことに、亀梨はまず怒りだした。
気が早いだの、情緒にかけるだの、耳を染めて先輩を叱責するのは後輩である亀梨だ。
さらに、勝手知ったる、というふうに後輩が茶を淹れはじめたときに、違和感は最高潮、この部屋に来慣れているのか?
そんないたいけで健全な疑問は、予想斜め上の回答でもって受け入れられた。
ことの始まりは突然だった。
ぱしゃり、と茶の入った湯呑みが倒れた。せんぱい、やけど、と舌足らずに慌てる亀梨は、赤西先輩の腕をとって患部を確認する。
へいきだって、と笑う先輩、おれをあんまり心配させないで、とうつむく亀梨、かわいい、とその顔を覗き込む先輩、たちまち顔を赤くする亀梨、
どうしたことだろう。
これはいったいなんだろう。
昼間うるさい蝉たちも息を潜め、障子の向こうに発光するのは月と、蛍の数頭。
(蛍のような昆虫の類は一頭二頭と数えるのだと、勿体ぶった口調で雑学めいた知識を押しつけたのも、たしか亀梨だったと思い浮かぶ)
やがてその、毒と理攻めに特化した唇が、まったく別の用途でもって使用される。
ぺろりと、先輩の腕を舐め上げ、その勢いのまま、はしたなくも首筋を這い上り唇に吸いつく。
「猫みたいだ」、と。
おれが心の中で思うのと、赤西先輩が声にするのは同時だった。
そこから先輩はあっさりと、狼になり下がる。
喉の奥を、普段の奔放さのままに低く鳴らし、猫の喉笛に歯をたてる。
「いたい、」
ちっともそう思っていないような気軽さで呟いて、亀梨は笑った。
「いたくしたことないだろうに、」
少し呆れたように、赤西先輩も笑った。
「うそばっかり、死ぬかとおもったことがありますよ何度か」
「痛みで?」
「いいえ」
「じゃあ、気持ち良くて、だろ」
「いいえ、死にそうですよ、おれはいつだって、先輩がすきすぎて」
いつもやり包められてはいられないとばかり、亀梨は狡猾に目を眇めてみせる。
ほんの少しの、襖の隙間からそんな表情もよく見える。
押し入れ内はどうしたって暑い。暑い。夏の夜半時、おれはいったいぜんたい何をしているのか、全く。
かぶりつきたいほどの狙い澄ました視線に、文字通り反応するのが、赤西先輩の野生たる部分だ。
枕もとを彩るろうそくの赤、ふ、とただの一息で消し去ると、
夏の夜のしっとりとした闇が質感を持って場を包む。
「かわいくて、どうしたらいいんだろうな」
「ふふ、どうにかしてくださ、あ・・・っ、」
豪胆な舌と歯が生意気を押し黙らせる、ぺろり、
耳の傍からはじまって、唇、首、鎖骨、肩、胸に歯を立て、腋、臍、するすると下腹部を通って、しかし肝心なところには触れられずに裏返される体、
背筋、肘、肩甲骨、また背筋を辿り、一部分を避け太腿へ、そして足先へと。
性格に似つかわしくなく、的確に這う舌先を認め、
先ほどまでの威勢も息も絶え絶えに、意地悪すぎる、と訴える視線を、余裕の笑みで返すは歳か経験の差か。
ぐったりした体躯をまたしても軽々引っ繰り返して、赤西先輩はあらためて、褥の中に亀梨を引っ張り込んだ。
「かぁめ、おまえはもっと自覚しな」
「?」
「可愛い後輩たちはいつまでも、無害な子どものままじゃいてくれないらしいから」
低い笑みののち、
ツトン、
と不躾に音がした。
見ると、おれの耳朶のわずか二センチ横、苦無(くない)が打たれている。
襖のこちらがわに三分の一ほど刀身を埋め込ませて、それはおれを恐怖に震えあがらせるに十分だった。
視線のみで事態を確認して、物言わぬ殺人道具の切っ先に思わず総毛だつ。
気づかれている。
気づかれていた。
いつから?おそらく、はじめから。
「あ、・・・っく、せんぱ・・・?」
「虫がいただけ」
「そ、な理由で、くない、持ち出さな・・・で、襖の穴、の修理代、ま、た、っ請求、しなきゃ・・・あ、あ!」
「・・・すげえでかい虫だったの」
苦笑の似合わない男だと思った。
赤西先輩はいつでも、底抜けに、いっそ悪意すらそこに感じるほど無邪気に笑うから。
おれは震えの走る指先で、なんとかわずかに開いた襖を閉めようと努力する。
それすら見透かしたように、
「穴があけばよく見えるだろーしなー、」
そこから見ていろと、指をくわえてただ見ろと、
今後一生おれのものになることのない亀梨の痴態をその目に焼けと、
暴君の視線が雄弁に語る。
人好きのするいつもの笑顔でなく、二匹目の獲物を捕えて喜ぶ捕獲者の目をして、
まっくろに笑う。
背筋を冷えた汗が舐める。
「なにが、?」
「気にしなくてもいいからここ、緩めないでいろよ」
「ひ、ああ、いや、いやだ・・・っ曲げないで、やだ・・・!」
「かめかわいいな、敬語とんじゃったー」
おれはそこで初めて自覚する、気に喰わない大嫌いなうっとおしい死んだらいいとすら思っている、
そんな男の瞳に声につま先に、おれはこれ以上なく欲情していた。
精通を迎えたのは昨年の冬。
しかしそれ以来、知識として理解してはいても、性的な欲求は薄く自分の体に変化が認められたのは数えるほどだった。
十三を数えたばかりの身空で、この状況はきっと刺激が強すぎた。
けして、亀梨だからではない、と自分に言い聞かせる。
「せんぱ、も、つらい」
「そうかー、じゃあ楽にしてやろうな」
わざと、こちらに向け大きく足を開かせて、後ろからあっさりと抱え上げる。
あまりの光景に、う、と小さくうめいてしまう。
亀梨は喉をのけ反らせ髪をやわく乱して、ひどい、とか、ふかくてやだ、とか泣いた。
赤西先輩はそれらいっさいを無視して、傲慢な舌でその涙を舐めて、飲み込んで、満足げにする。
ぴんと張ったつま先は色を失いしろく震え、噛みしめられた右手の人差し指は唾液に濡れて輝いていた。
やがて律動が始まって、接合部から目が離せない。
屈強な腕が、体躯が、三つの年の差を痛感させて、
こんなところにいる自分がたまらなくみじめになる。
「あ、あ、せんぱい、せんぱい、せんぱい・・・っ」
「かめはほんとにおれのことが大好きだなぁ」
「いじ、わる、あ、いやぁ!!」
膝に乗せるばかりでは飽き足らず、幾らも乱れた布団の上に亀梨を引き倒して、
赤西先輩は貪るように味わおうとする。
決着はすぐについた。
亀梨は大きく痙攣して、思いのたけを自分の腹部にまき散らし、
そのまま幸福そうに布団に四肢を投げだす。
淫靡に息をせく、先輩と比べるべくもない貧弱な肢体は、じゅうぶんに彼がまだ十三の子どもであることを知らしめている。
赤西先輩はその上下する胸の辺りを一撫でし、あまく悪態をつく。
「自分だけ、ずるいと思わないの、」
「ならもう一度、かずのことを、きもちよぅくさせてくださればいいじゃないですか」
一度達して幾分気が大きくなったのか、得意げな瞳がゆらゆらと先輩を貫く。
「いくらでもお付き合いしますよ、あなたの体力に付き合えるの、おれくらいでしょうから」
整わない息のもと、それでもずいぶん生意気に語られた口上に、
意外や、赤西先輩は心底楽しそうに笑って、かわいい奴だな!かめだいすき!とばかでかい声を出す。
それにつられるように、亀梨もふにゃふにゃと笑う。高飛車でも不遜でもない、相手を愛しくてしかたないとただ訴えるだけの笑顔。
さきほどまでの淫猥な空間にあって、どうして彼らは。
「よっし、おまえのこと、もっときもちよくしてあげたいぞーおれは」
「はい、期待してますね」
どろどろとした獣のようだった先輩と、高飛車で淫乱な亀梨、
破綻気味の二人が憩うて、
どうしてこんなにも、やわらかくて、あまったるくて、整っているんだろう。
二人の夜は果てなく長く、亀梨が熟睡したのは丑の刻も遅くをまわってからだった。
赤西先輩は、普段からは信じられない繊細さで、亀梨の体を清めていた。
真っ暗な部屋にあって、月明かりが、色のないその頬に金の頬紅を刷く。
「眠くないかー?」
とうとつに、低く声がする。
おれは単純に驚き、気配を解放し、意を決して襖を明け放つ。
同時に引き抜いた苦無が、掌のなか、にぶくこちらを睨む。
思いのほか、先輩は穏やかだった。
室内を埋める匂いたつ色香に若干当てられ、
あられもない姿で眠る亀梨にまずは向いてしまう視線を、無理やり引き剥がした。
「三年生には遅い時刻だろう」
亀梨の髪を得意げに梳きながらくつくつと笑われて、噛みしめる唇が震える。
これどうぞ、とさきほどの苦無を差し出すと、さっぱりと受け取って
ありがとう、と礼を言われる始末。
このひとの行動は理解の範疇を超えている。
「怒らないんすか」
ふてくされたただの子どものように呟けば、赤西先輩はそりゃそうだろ、と豪胆な笑顔を見せる。真白い歯が目に痛い。
「かわいい後輩が、おれの部屋に忍べるほどに腕をあげたこと、喜びこそすれ怒る道理はねえだろ」
心底うれしそうに笑って、(相手にされないことに業腹するも、)
でもそれならあの殺意の塊のような苦無は、襖の穴はどう説明をつけるつもりか。
思わず怪訝に眺める。
それを受けて、おれの心中など見透かしたように溜息をつき、
忍ぶ者としてあるまじきか、気配に動ぜずすやすやと寝息を立てる亀梨にふわりと上掛けを着せかけ、
「…褒美に見せてやったんだけど、可愛かったろ?」
夜のこれは、と亀梨を指差し、不敵に目を細める。
別におれはこんなやつ、と言いかけて、やはり見透かすような双眸にさらされてはぐうの音も出ない。
「気になって、気に喰わなくて、それでもかわいくて、しかたねんだろ、これが?」
おれのことをおれより分かっているようにして、
低く喉で笑うやりかたが、どうしたって昼間の先輩と結びつかずに困惑する。
天才は無心で純粋、どこか狂気めいていて、凡人には得てして理解しがたい。
おれが十六になれば、この化け物じみた天才に敵うのか。
亀梨はそのとき、おれに、そのとき、・・・
「ピー、・・・早くおれを捉えろよ?おれを脅かしてみてほしいんだよ。
かめを巡ってでもそうでなくてでもいい。
いつかきっと、おれをきちんと怒らせてくれな」
まあおれは、いつだって負けたりしないけどな、と太陽のように笑う。
ちくしょう、負け戦はしたくないのに、
おれはこの人に一生かなわない気がしてしまうのだ。
そしてそれでも、挑み続けてしまう気が、する。
相手にされない力の差、その屈辱とは、これほどのものか。
先輩から、すっきりと打たれた二投目の苦無は、
ぐさりと心臓のらへんをえぐって、抜けそうにない。
あわわわわっしょい
思いのまま突っ走ってしまってすみません
毎度p様の扱いがひどすぎる