いきなりですが、


おれのかめにこどもができました。


とはいえ、おとこのこのかめが妊娠したとか、精神科行きの痛めな妄想をしているわけではありません。

かめが酔ってぐでんぐでんになったとき、意識のないままおんなのひとに襲われて、その一回によってできた子どもです。

おんなのひとは大好きなかめに嫌われたくなくて、それを黙っていました。

おんなのひとは生まれた子どもを、一人で育てようとしました。

その子はかめが知らない間に、かずやと名づけられました。


ところが先日、おんなのひとの弟が泣きながらやってきて全ての真実をかめの喉元に突きつけました。

おんなのひとは突然事故で亡くなってしまい、もうその子どもが頼りにできるのは、その弟とかめだけということでした。

弟は未婚の母となったおんなのひとの全ての真実を、今となっては遺物となってしまった、おんなのひとの日記から知りました。


おんなのひと、というのは、おれの、姉でした。


かめはひとしきり泣いて、

次の日にはその子どもと生きる覚悟を決めていました。

おれもひとしきり泣いて、

次の日にはかめとその子どもと生きる覚悟を決めていました。





長梅雨もようやく明け、

初夏独特の匂いを纏った、白んだ太陽が世界を染めて。

まだ弱弱しい蝉の声がおれたちの耳をあやす、

忘れられない夏のある日のことでした。


























おれのかめにこどもができました。


























「じん!じん!じん!!ちょっと!!」



かめは珍しく慌てていました。

かめがこんな慌て方をするのは、

かずやがどうにかなったときだけなので、

おれはとっさにかずやのほうを見ました。


すると。



「か、かずが、かずが・・・歩いてる!!!」



慌てすぎたかめはカメラをとり出そうとして、引き出しに指を挟んでしまいました。

もちろん慌てたおれも、思わず赤飯がどうのと呟いて、馴染みの惣菜屋に注文するため携帯なんぞ取り出していました。

親バカ二人を横目に、かずやはにっこり笑って、

そのまま頭からうしろに転倒。



「かずー!!!」



カメラも携帯も放り出し、おれとかめは大声で泣き出すかずやの後頭部を氷で一生懸命冷やしました。

携帯を拾い上げ、今度は病院病院、とか呟くさらに慌てたおれをたしなめるみたいに、

ようやく泣き止んだかずやがまた笑いだしました。

まったくたんこぶで病院なんてどんだけ過保護なんだ、とかめも笑いましたが、

かく言うかめ自身もこっそり、

近所のかかりつけ医の電話番号のメモを用意していたことにおれは気付いていました。


かずやがはじめて歩いた、ある日の正午のことでした。








「じん、おむつの替えも二枚くらいカバンのなか入れといて」


慌しく弁当の用意をしながら、

かずやを着替えさせていたおれを突っつくかめ。

その手元を見れば、大人用の卵焼きやウインナーに混じって

かぼちゃをすりつぶしたものとか白身魚にとろみをつけたものが調理され、タッパーを占領しています。

ミルク以外は飲まない!と頑固だったかずやですが、

最近は少しずつ味のあるものも好むようになってきました。

かめもおれも子育ての本を片手に日々奮闘中です。

そんなおれたちなので、たまには息抜きにと、今日は三人で近くの公園まででかけます。

歩いていこうと思ったのですが、昨日おもちゃを踏みつけて足の裏をケガをしてしまったかめのために、車を出すことにしました。

かめは平気だと言い張りましたが、

おれはもちろん、車で行こう、なんならお姫様抱っこでも、と持ちかけました。


「おひめさ、・・・黙ればか!」

「じゃあ車で!」


言い争っているうちに、

何を思ったのかかずやがニッコリ笑いながらとことことこちらに歩いてきました。

車の鍵をちいさなちいさな手に握りしめて、

あーとかうあーとか言いながらそれをおれたちに差し出しました。

思わず笑ってしまいました。

おれたちの喧嘩の意味なんかわかるはずもないのに、その的を射た行動がおかしくて。

鍵についている、かずやのお気に入りである機関車のキャラクターのキーホルダーが踊っていました。

あとから、

鍵なんてかずの手の届くところにおいておくんじゃない、口に入れたら危ないだろバカとかなんとか、

散々おれは責められましたが、

かめの目も笑っていました。

結局公園まで、ゆっくり車でドライブしました。


かずやが離乳食を食べはじめて、七日目の朝のことでした。









ある日

かめのおかあさんがケーキをもってやってきました。

物心ついたころから姉が母代わりだったので、おれはあかあさんという存在にとても憧れていました。

かめのおとうさんがかずやの写真をとりにやってきました。

姉が亡くなる三年ほど前に、父も他界していたおれなので、おとうさんという存在がとても懐かしく感じました。

かめの両親が帰ったあと、

かめはそんなおれを抱っこして、背中をとんとんして、


「じんの家族全部におれがなったげるから。おかあさんで、おとうさんで、おじいちゃんで、おばあちゃんで、弟で、おばさんで、

 ・・・おねえさんに、なったげる。おれが」


おれはかめが、どんな気持ちで、おねえさんとか言ってくれたんだろうと思って、

人生無理矢理変えられてしまったおんなの弟抱きしめて、このひとなんでこんなこと言えるんだろう、なんでうらんだり蔑んだりしないんだろう、

ずっと、最初からずっとひっかかっていたことが頭を埋めて、思わず


「かめは、おれのねえちゃんや、おれ、のこと、・・・かずのこと、も

 なんで、おこらないの。うらまないの。なんでいらないって、迷惑って、言わないの。なんで、そんな、」



おれたちを、あいしてくれるの。



ずっと言いたくて、言えなかったことでした。


「おまえのおねえさんには、そりゃ腹たったよ。

 でもそれは、かずの面倒がどうとかそういうんじゃなくて、おれの意志に関係なく無責任な行為をされたから。

 でもそれ、おまえにもかずにも関係ないし。おれ、おまえが好きだから。かずが大事だから。おまえとかずと会えて、おれ、ほんとに

 ああ、幸せなんだ、って、思えるようになったんだよ。

 そんで最近はさ、そんなお前のこと育ててくれたおねえさんで、大事なかずの母親であるあのひとを、うらむなんて、できないって、わかったんだ」


ただ、ただもうかめが優しすぎて、

泣きました。

頭を埋めていた疑問は愚かなものでしかないと気付いたら

今度は、おれの胸を、かめの優しさが満たして

ずっと、最初からずっと本当はわかってたはずの、かめの優しさにあらためて触れて

おれは子どもみたいに泣きました。

かめはせっけんと太陽のにおいのするサマーニットの裾で、おれの涙を拭ってくれました。


おれたちのかずやはといえば、ベビーベッドで夢を見ていました。





かずやの一歳の、誕生日の夜のことでした。
































書いて、読み返して、自分もうだめだと思った

タイトルからしてみなさんドン引きですよね。
だけど多分続き書きそうです(えー)
なんていうか、イイ男が頑張って子育てするのってすごく萌えます。
人にやさしくとか大好きでしたもん(笑)

というかこれ、設定おわかりになりましたでしょうか・・・?
かめとじんじんはもとから付き合っていて、でもそんなこと知らないじんじんのお姉さんがかめに惚れて犯しちゃってデキちゃって産んで、
その子どもをかめとじんじんで育ててるっていう。
じんじんはかずや(子ども)のおじさんなんですよね。

ややこしくてごめんなさいなんですよね。