ファーストキスは二歳のとき。双方の親の目の前で、ちゅっちゅちゅっちゅと恥ずかしげもなく。
相手はあかにしじんだ。
セカンドキスは十歳のとき。クラスの女子よりもお互いの方が、正直いって可愛かったから。
相手はやっぱりあかにしじんだ。
サードキスは十七歳、たった今。二人で缶ビール十本程度あけて、見事に酔った。
面白みもないが、相手はご存知、あかにしじんである。
さんかいめ
「三回目はやばい!」
酒の勢いでキスをしてしまってから、おれとじんはそれはもう慌てた。
じんはまだいい。
こないだ彼女と付き合って別れる、という素晴しき青春経験をすることができたから、
奴のサードキスは(ついでに言うならファーストセックスも)女なのだ。
でもおれはどうだ。
初カノのできた親友を、羨望の眼差しで見ていただけのおれときたら。
十七年生きてきて、通算三回のキス全て、男、よりにもよって相手が親友のじん、だなんて
どう考えても可哀想すぎるのではないか。
「どーすんの!かめ!きもちかったな意外と!」
アホがまだ何かくっちゃべっているが、知ったことではない。
おれは酒が招いた非常事態に混乱しつづけていた。
一気に酔いの醒めた頭で、身の処し方を考えてみるに、
「よ、よし。忘れよう。」
大真面目な顔でじんの頭を殴りつけた。
簡単な記憶消去法であるが、じんはただ単に痛みに悶えていただけだった。
「このころは可愛かったのになぁ〜・・・」
二人で授業フケて、学校北校舎のトイレ、並んで用を足しているときに、
じんがふと胸ポケットから写真を取り出した。
見れば、二歳のころの二人が写っている。
恥も外聞もなくちゅっちゅちゅっちゅとやらかしていた時代だ。
こんな写真を肌身離さず持っているなんて、さすがおれのことを溺愛しているな親友、と思う。
じんは昔からおれに大変甘いし、可愛がりようも半端じゃない。
弟か何かのように思っているのだと思う。
「ほんと可愛かったよなぁおまえ、・・・それのサイズもさぁ」
喜色満面におれの股を覗き込むから、横っ面をグーでいってやった。
サイズに関してはお互い様だ。
「覗くなきしょく悪ぃっつのアホ。あと可愛いおれの写真を汚い手でさわるな!」
「自分で言うな」
キスを三回ばかりしてみたところで、なんの変化もない。
おれたちは彼氏彼女のように脆い関係に成り立っていないんだ、と思い、安心する。
親友、というカテゴリは、そう簡単には崩れない。本当に安心する。
男同士でよかった。心から思う。
なのに。
「なー、もっかいしよーよー」
最近、顔だけが取り柄のバカが何をとち狂ったか
そんなことを言い出すから困る。
トイレから出て、洗った手の雫をきるようにぶらぶらさせながら
じんは至って真面目な顔で言う。
「かめとのちゅーきもちよかった。」
「おれはただキモかっただけだけど」
「ひっど!おれ、かめのために女切ったのに!」
「フラれただけだろ黙ってろ」
「・・・まぁそうなんですけど」
女の子というのは、実になんでもわかってしまう生き物だ。
じんの元彼女は、こいつが顔だけのバカだと早々に見抜き、さっさと去っていった。
それでいて女の子というのは、肝心なことはなんにもわかっちゃいない生き物でもある。
顔だけのバカだけど、本当のホント、根っこの部分で、こいつがものすごく好い奴だって気付きもしないんだ。
「あーカノジョほしーなー、なぁかめ?」
「ドーテーのおれへの当て付けか!」
「おれがいつでももらってやるのに」
「おまえ相手だともらわれるの別のほうになりそだからヤだ」
冗談に、大袈裟に尻を押さえれば、じんがそれに乗っかってさわらせろーとか騒いで、おれはそれでセクハラだーとか叫んで、
微笑ましい男子高校生の友情・青春。
ニヤニヤしながら馬鹿馬鹿しい会話する、馬鹿みたいに笑う、馬鹿みたいに無闇に走る、
そんな他愛ない時間の全部がとても愛しいのに。
でもなんか最近、なんだかわからないところで、
おれたちは変なんだ。
変なのは
男子高校生がそんな会話してしかるべきだと思っている
私自身です
微笑ましくないよ
アップ日がエーのひとの誕生日なのにこんなネタで申し訳ないです