さらに、どうなったかといえば







亀梨はしばらく、おれのことを「仁」とは呼べなかった。

山下のことはピーって呼ぶのに、だのとくだらない妬心を燃やしたのはそれでも付き合って五日目くらいまでで、

なんでって五日目のその日に、真っ赤な顔をして、

「だってすごく恥ずかしいんだよ」と亀梨が告白してくれたのだ。

言外に含まれる、赤西くんだから、の意味合いに、おれはすっかり気を良くしたわけで。


そんな純情な亀梨は、いつだってそんなふうで、

言葉ひとつ、行動ひとつ、視線ひとつ、笑顔ひとつ、

なにもかもでおれの心のしわくちゃな部分をアイロンがけてくれるような。

凝り固まったところをプリンみたいにほぐして、そのなかの汚い部分だけ、スプーンで掬いとってくれるような。

こんな心地よい気分を味わうのは、生まれて初めてで、

亀梨と二人、夕日を背に、雑多な話をしながらの帰り道、

不意に泣きそうになることがある。

たまらないのだ。

ノスタルジーとか原風景とか、そうではないのだけれど、それに近しいものがある。

そうなんだ、亀梨ってそんな奴、と、無い頭を絞って説明したら、

田中はわけわからんと片眉を上げて、上田はもっと可愛く説明しろと憤慨して、山下だけはわかる気がすると同意した。


文字通りおれは亀梨に首ったけなのだが、他にも亀梨に心酔しているやつは多くて(たとえば前述の三人みたいに)、

おれはそれはもう気が気ではない。

だからなんとかお早めに手をつけてしまいたくて、

というか純粋にそばにいるといてもたってもいられないくらい欲情して、

だのに亀梨はこんなにも純情で手を出しづらいし、ああもう!といった、

思春期特有のグルグルに悶絶する日々だった。


きっかけは、付き合って二十日目に訪れた。

夏の暑い陽差しをくぐりぬけた後というのに、

相変わらず抜けるような白いうなじに辛抱たまらなくて、ひそかに喉を鳴らしていたその日、

亀梨は初めて「仁くん」と呼んだ。

おれはうなじにばかり目が行っていたから気付かなかったのだが、

亀梨は相当に意を決してくれたようで、

少し声音が震えていた。

そのあとで、「やっぱり恥ずかしいね」と困ったように笑うから、

その日のうちに自分の部屋に連れ込んでしまっていた。


亀梨の体は意外と感じやすく、

おそらくは自分でも聞いたことのないような声をあげさせて、

自分でも触ったことのないような場所も触って舐めて、

亀梨は泣いていて、でもとまるわけなくて。

真白いうなじが真っ赤になって、

それでも「仁くん大好き」、とすがりつく腕に

いとしさがメーターふりきって、いっそ食べちゃいたいと本気で思った自分がちょっとこわかった。


「仁くん」が「じん」に変わるころ、

亀梨自身は相変わらずお日さま!といったほのぼの具合だったが、亀梨の体は劇的に変化していた。

よく最中に「こわい」っていってた。

自分で自分がわからなくなってこわい、ということだと思う。

亀梨は快楽に弱かった。

必ずおれより先にいってしまって、しばらくの放心のあと、いつだって「ごめんね」と真っ赤になって震えながら謝るのだ。

そんな亀梨も可愛くて、

だけどたまには意地悪してやろうと思って、「今日は先にいかないでね」ってお願いしてみた。

亀梨はやっぱり真っ赤になって、わかった、って睫毛を震わせる。

絶対無理でしょ、できるもん、うそだーカメ感じやすいのに、じんのばか、とかなんとかバカップルな会話のあと、

後ろから挿れて、数回抜き差しすると、

ほら、すでに亀梨はいっぱいいっぱいだ。

でも、これはいくでしょ、これいっちゃうでしょいつもなら、って場面でも、亀梨は今日はこらえる。

あれ、と思ってふと見ると、

亀梨は自分のそこを両手でぎゅっと握って、耐えているらしかった。

うわああああ、なんていうかいじらしくて健気で、

もうその図だけでおれとしてはたまらないものがあったのだが、


「だって、じんと、いっしょに、…ぃき、た、

 あっ、やっ、なんでおっきくするの?やだ、がまんしてるのに、あ、

 おれっ、手、うごいちゃう、や、や、」


無意識に自分で手を動かしてしまって、そのことに焦って戸惑ってでも気持ちよくて、

そんな様子の亀梨にもういろいろ振り切ってしまった。

両手が使えないので、頬と肩で細い体を支える。その頬をシーツにすりつけながら、亀梨は泣く。

どうしてくれよう。


「、くっそ!かわいすぎるだろばかやろ!」


強引に体をひっくり返して正常位に持ち込み、細い腰を掴んで、がむしゃらにうちつけてやる。

握らせた手はそのままに、足は大きく開かせて、その表情まで堪能して、

…壮観すぎて叫びたい気分だった。

亀梨はあかにしくん、とか、じんくん、とか、じん、とか、

いろいろでおれの名前をよぶ。

気持ちよすぎると、混乱した亀梨はこうなる。

でも結局、ぜんぶがおれの名前。嬉しすぎておれも泣きたい。


のどの近くにあるキスマークは、たぶんこないだつけたもので、それを上から更新して、あとは無遠慮に増やす作業に没頭する。

最近は、制服も冬服になって、喉もカッターシャツできちんと隠れるので、(真面目な亀梨は上までボタンをしめる)

いっぱいのキスマークを贈っても許してくれるのだ。

季節が冬に向かってせわしなく色を変えて、季節が色を変えた分だけおれたちは近くなって、

おれたちが近くなった分だけ、亀梨がかわいくていとしくてたまらない。

細い腰は、肉を食べてくれとお願いしても細いままで、

薄い胸も、栄養つけてくれとお願いしても薄いままで、

相変わらず山下はライバルで、上田は亀梨を溺愛していて、田中はヤクザだ。

おれは相変わらず、亀梨がかわいくていとしくてたまらない。

おれは亀梨をカメと呼ぶようになったし、亀梨からおれへの呼び方は二度変わったし、

亀梨の感度は予想値をはるかに上回って上昇中、

でもおれは相変わらず、亀梨がかわいくていとしくてたまらないのだ。



「じん、手、あかにしく、おねが…さわって、」


亀梨はとうとう、手をべたべたにして、それでやっと言った。


「なにを?」

「いじわる、じん、じんくん、や、ここ、じんが、さわって!」

「ここってどこ?」

「あかにしくん、ひどすぎる…っ、ここて、ゆってる、のにっ」


亀梨はとうとう、べたべたにした手で、おれの手をそこに導いて、

たぶん正気に戻ったら穴を掘って埋まっちゃうんじゃないかと思うようなことをする。


「おーいかめなしさーん?おれの手、ダッチにしないでよー」


おれの中のかっこつけマンの部分を総動員して軽口を叩いても、


「だって、だってね、これが、

 じんの手でしてもらうのが、いちばんきもちい…っ」


亀梨はたったの一言で、おれの理性を崩壊させてくれる。

たったそれだけでおれは、あっけなく、苦い若さを暴発させた。

まさかのタイミングでおれ自身もびっくりしたが、

亀梨も呆気にとられたように、自分の腹を押さえながら、首をかしげる。


「あれ?じん、なかで・・・?」

「あ、ご、ごめ!つけてねえのに、ナカで出しちゃった」


腹痛くしないかとか、風呂で流そうとか、

おれが一人で焦っていると、亀梨はそれはもう女神さまみたいにきれいに笑って、


「おれ、じんとの約束、守れたね」


じんより先に、いかなかった!と、まだ整わない息のまま、得意げにする。

なんだこの子。

なんでこんな、こんな。

ありがとう神様仏様、田中様山下様、上田様、この子をおれにくれてありがとう!

いてもたってもいられず、萎えていない亀梨のそこをひっつかんで、強引に咥える。

一回出させて、そのまま風呂場に転がして、くまなく舐めて吸って、洗って、掻き出して、突き入れて、またしゃぶって、

亀梨が快感にあえぎながら、怖がって泣く。

おれはずっと無言だったから。


「じん、じん、怒ったの?ごめんね、でもやめて、おれきもちよすぎて、こわれちゃう、

 なんかゆって、じん、じんくん、あう、も、ふやけちゃう」


結局亀梨が意識を飛ばすまで、おれは何も言えなかった。

怖がる亀梨には申し訳なかったが、だって口を開いたら、

あいしてる、かわいい、いとしい、けっこんしたい、いっしょうそばにいて、だいすき、すきだ、すきすぎる、うわきしたらしんじゃう、ころしちゃう、おひめさま、めがみさま、すき、はらませたい、たねづけしてやりたい、たべちゃいたいくらい、きみがすき、かめ、かめ、かめ、かずや、

おそらくそんな痛々しくもちょっぴりリアルな言葉ばかり羅列して、もっと亀梨を怖がらせることになってしまいそうだったから。


亀梨は清潔なベッドの上で目覚めた。

おれは汗をかきながら正座で待っていた。

あんな仕打ちをして、つまり勝手に中で出した揚句暴走して亀梨を怖がらせて、ふやけちゃうくらいにさせて、いやふやけちゃうとかどんだけかわいいんだちくしょう、いやいや亀梨はいつでもかわいいけど、

まあ別れるって言われても仕方ないことをしてしまった自覚がある。

でもおれは、どうしたって、別れないと明日死ぬって言われたって亀梨と別れたくないものだから、

こうして正座しているわけで。


「?ん…、じん…?どしたの」


その声がかすれていて、さらに罪悪感をあおる。


「カメ、ごめん!!おれ、なんていうか、その」


土下座して謝る。するとハダカの肩に、なにやら温かいものが。


「ふふ、ずーとそうしてたの?肩つめたくなってる」


寝起きの亀梨の手は、熱いくらいで、それがおれの肩をなんども往復する。

お日さまの温度だ。


「パンツくらいはいてよもー」


くすくす笑って、おれだいじょうぶだよ、男だしあれくらいなんともないから、と健気に言う。

お風呂にいたのに、体じゅう、じんが拭いて、ここまで運んでくれたんでしょ?ありがとう、と礼まで言う。

おれは泣きだした。亀梨はひとしきりびっくりしたあと、また笑いながら、

おれを布団の中に引き込んで、抱きしめて、


「だいすきだよ、じんのこと、せかいでいちばん、かわいいね、じん、かっこいいよ、じんがいるとげんきになるよ、

 夜はじんのこと考えて眠るから、じんがおれの夢の登場回数1位だよ、授業のときも、じんばっかり見ちゃうよ、

 携帯にね、じんから着信やメールが入ってるとね、うれしくてたまらなくってちょっぴり泣きそうになる、

 じんがおれを嫌いになっても、おれ、じんから離れてあげれないかも、ごめんね、ごめんね、だいすきだよ」


亀梨のやさしい言葉の羅列は、おれのそれと違って、毛布みたいにおれをふわふわ包む。

おれのほしい言葉ばかりを、惜しげもなく、茶碗にたっぷりとよそって、どれだけでもおかわりさせてくれる。

おれは大泣きしながら、それでも遠慮なく腹を満たしてもらって、幸せで幸せで、また泣く。


「あーほんと、おれカメが好きすぎるわ」

「鼻水たらしてると、いけめんが台無しだよー」

「っく、カメからイケメンって!初めて聞いた!」

「あ、ひどい、かっこいいことをイケメンてゆうんだよ、知らないの?」

「や、知ってるけど、知らないわけないけど、カメがそゆことゆうの似合わないてゆうか、っくく、」

「もーなんで笑うんだかなー」


亀梨は不可解そうにしながら、勝手知ったるおれの家、ティッシュを箱から二、三枚摘んで、おれの鼻にあてる。

子どものようにされるがままになりながら、鼻を摘まれたまま、

おれも、カメがおれろことキライにらっても、ぜってー離れてあげれらい!

そう宣言して、やっぱりしこたま笑われた。











誰も待ってないのに続きを書いてみる
うちにしてはちょっとえろちっく多めかな
でも、マッパで正座→マッパで土下座の二連コンボで撃沈したお嬢さんが多数いらっしゃるのではと思います
すみませんヘタレAで
頼れるイケメンなAを書いてみたいものです