まほうつかいがまほうつかいじゃなくなる二ヶ月くらい前のはなしです








マニキュアなんか気持ち悪いと吐き捨てる

あなたの

短く整えられた四角い爪が

こんなにも愛しい















ゆびさきからまほう(まほうつかい番外編)















イモリの尻尾だの、ヘビの目玉だの、

そういういかにも魔法使いくさいものをまほうつかいが使っているのを

見た事がない。


流れ星のひとかけらとか、虹色草の種とか、

そういう浪漫にあふれた眉唾物ばかりを仕入れている。


おれも長いこと助手をやってきて、それなりに勉強もしているが、

魔法書によればやはり

イモリだのヘビだのコウモリだのを活用したほうが魔法の濃度は上がるそうだ。


今日は思い切って

そのことをまほうつかいに尋ねてみた。




「は?イモリ?あんなキモチワリィもんさわれっかよ!」


まほうつかいは右手に白ワイン、左手にまじない用の黄色いプードゥー人形を抱え、

なにいってやがんだこいつはとでも言いたげに肩をすくめた。


「んなことしたら指が汚れちゃうだろーが」


ぐつぐつ煮立った鍋の中に、ワインをビンごと放り込みながら

なにか呪文を唱える。

すると人形が突然発光しはじめ、まほうつかいの手を離れ、自ら鍋に飛び込んだ。


「自殺行為!アホだこの人形!」


おれのレベルの低い発言に


「アホはおまえだ。」


などと呆れかえって受け答えつつ、


「おれの指見てみ」


まほうつかいは自分の人差し指の爪を少し噛んで

おれの目の前に差し出した。


「わ、虹色!・・・わ、わ!流れ星が爪の中走ってんじゃん!?」


おれは驚愕した。

四角く整えられた清潔な爪の中に、テレビの映像のように、綺麗な光景が映し出されている。

虹色草の種の虹色に染まったかと思えば、流れ星が光を散らし、

さきほどのワインの白が甘く香って、星型の可愛らしいプードゥー人形がくるくる踊った。


マニキュアみたいだった。

(おれがたまに関係を持つ、顧客のおねえさんのそれは、真っ赤だ)

マニキュアよりももっとずっと綺麗で、愛しかった。

(おれが本当につながりたいのは、この綺麗な爪の、このひとだ)


たまらなく胸が苦しくなった。



「まほうつかいの指先はさ、覚えてんの。

 そいつが今まで使った魔法をさ。

 だからおれは、気に入ったものしか記憶させたくないの」


そういってニッと笑うと、パチンと指を鳴らす。

爪はもとにもどって、おれの心ばかりが元に戻らない。

きれいな指先、きれいなまほうつかい。

この指先は、きっと一生、

商売女みたいな赤には、染まらないんだろう。血のような赤とは、無縁なんだろう。


おれはきたない。



「ねえ、そんなら、」

「ん」

「・・・おれが形代になったらさ、」


形代というのは、魔法を強力にする代償として、

実際のいきもの(イモリやヘビやコウモリや、禁忌ではあるにしろニンゲンなんかもそれに含まれる)を贄に使用することだ。



「おれが・・・かずの魔法になれたらさ、・・・」



一生、ずっと、彼が手を洗うたび、彼がものを食べるたび、彼が魔法をかけるたびに使う、彼の指先に、

おれは住み続けることができるんだろうか。

きれいな指先に、きたないおれは記憶してもらえるのか。



「ばか。今日おまえおかしいぞ」


まほうつかいは俯いて、もう一度指を鳴らした。

鍋の中が銀色に輝いて、飛び込んだはずの人形がまた飛び出してきた。

ちょこんとおれの肩に乗るそれは、先ほど爪の中で踊っていたものに間違いなかった。


「うあっちぃ!!」

「そりゃまあ今まで煮てたわけですから」


人形は星型のキーホルダーのようで、鍋の中身と同じ銀色に変色している。

きらきら、きらきらしていた。


「やる」

「あーあつかった・・って、え?」

「試作品だからやる」

「えー、っと」


まほうつかいはますます俯いて、指先で自身の黒い服の袖口を弄んだ。

彼の素晴しい魔法を生み出す指先は、こんなふうにして、普通の人と変わらない仕草もする。

ただ、その仕草は、おれにのみ効く、劣情の魔法をかける。



「おまえがおれの魔法になんかならなくても、おれがいくらでもおまえに魔法をやるから、だから」



小さな声で必死に言う彼が愛しくて

まほうつかいの手をとり

その指先に

中世の騎士のようなキスを贈った。


ああ

でも

騎士が聞いて呆れる、

おれはただ


やさしくて甘い指先を

きれいなものしか知らない指先を


きたないおれの忠誠で汚してみたくなったのだ。























「さっきのキスはなに」

「ん?こないだ読んだ絵本に描いてあったーどうゆう意味かは知らないけどさー」

「・・・うそつき」

「・・・なにがー」



「ちなみにさっきの人形にかけてあったまじないは安産祈願だからな」

「おれ一ミリもご利益ナシじゃん!!」

























B型!ってかんじのKの人がすきです
本質はワガママ末っ子なKがすきです
マニキュア気持ち悪いとかゆっちゃうの、フェミニストじゃないの
・・・って現実世界では本人ガンガン爪塗ってるんだけど

誕生日おめでとうぅぅぅ
誕生日らしくない更新でごめんなさいいぃぃ…